【2024.12月号】不当判決 オン資『義務不存在』確認訴訟敗訴
2024年11月28日、東京地方裁判所は「オン資『義務不存在』確認訴訟を棄却した。これにより保険医療機関にオン資資格確認の義務とそのための体制整備の義務がないことと言う原告の主張は認められず、また違法・違憲なオン資義務化により医療機関の閉鎖を余儀なくされる可能性による職業活動継続に対する不安のための精神的苦痛に対する補償も認められなかった。
岡田幸人裁判長は「違法とは言えない」と請求を棄却した際に「健康保険法は、保険医療機関が順守すべき事項について省令で義務付けを認めていると判断できる」、「省令では順守すべき事項の検討は厚労相の専門技術的な裁量に委ねられている」とも指摘、さらにオン資導入経費負担増による廃業も「直ちに事業の継続を困難にするとは言えない」とした。
準備書面に見られた原告の主張やその裏付けとなる数々の証拠や優秀な弁護団、そして裁判官の心証等原告有利に進んできたかのように見られた裁判進行、判決前には「勝訴」の高い可能性が囁かれていただけに、原告や支援者の誰もが裁判官の「原告らの請求をいずれも棄却する」との判決言い渡しに耳を疑ったし直ぐには理解が出来なかった。
9月号本主張でも取り上げたこの「オン資『義務化不存在』確認訴訟」についてあらためて確認しておく。2021年8月健康保険法にオンライン資格確認が追加され、健康保険証かマイナンバーカードのいずれか任意の方法で資格確認を行うことになったが、2022年5月厚労省社会保障審議会で翌年4月からのオン資確認義務化と保険証の廃止を目指す方針が突然提案された。さらに2022年6月の「骨太方針2022」に盛り込まれた。そこには全国医療情報プラットフォームの創設、電子カルテ情報の標準化等の「医療DX」推進、医療情報の民間利活用の法整備等も記載された。それだけではない同年8月の厚労省と三師会が合同開催したオン資確認に関するウェブ説明会で厚労省保険局医療介護連携政策課長が「療担規則が改正され2023年4月からオン資確認が義務化される。医療機関が確認システムを導入しなかった場合、療担規則違反になり、保険医療機関の指定取消事由になり得る」旨の発言をした。
法令に委任なしに省令による義務化を実施し、法令にない理由で「指定取消」をちらつかせての脅しが行われた。
これにより東京保険医協会が「国を提訴し、司法の場で違法性を明らかにする」本訴訟を提起して全国に原告団への参加が呼びかけられた。
原告団の主張は、国会が制定した健康保険法による委任がないのに、省令で保険医の権利を侵害する義務を課している。法律の委任がなければ、省令に罰則を設け、または義務を課し、もしくは国民の権利を制限する規定を設けることはできないという国家行政組織法12条3項に違反するというものだ。
整理をすると、健康保険法は「療養の給付」について厚生労働省令に委任をしているが、療養担当規則には「資格確認」について医療機関への義務付けの法律上の委任がない。そもそも健康保険法には資格確認の「方法」について条文に委任していると書かれていないのである。
今後この主張を東京高等裁判所に上告することで裁判は継続する。原告の主張や証拠が殆ど判決文に反映されなかった事を鑑みてあらためて証拠を補強し、判決文の「裁判所の判断」に多用されている「解するのが自然である、解すべきであり」につては裁判所の「推定」であるので十分に反証・論破出来ると確信できる。保険診療を守り抜く上でも本訴訟には勝利しなければならない。引き続き原告団の先生方には裁判への継続をお願いしたい。また多くの先生方に新たに原告に加わって頂きたい。