【2024.11月号】マイナ保険証は窓口トラブルの源(もと)、今年末の保険証廃止は撤回をせよ
前政権の負の遺産が二つある
岸田前政権はとんでもない負の遺産(閣議決定)を二つ残して退陣した。一つは健康保険証について12月2日以降の新規発行を停止することを各保険者に命じたこと、もう一つは防衛関係予算を2027年までに43兆円使うという防衛力整備計画を決めたことである。
ここでは保険証廃止にかかわる問題を取り上げるが、これは閣議決定の前に河野前デジタル相が勝手に打ち上げた事らしい。この専行独断を糊塗するために資格確認書の発行という非DX策となったようだ。
十分な情報を得ていない国民に困惑はもちろん、当協会の最近のアンケート調査で判明したように、マイナ保険証の窓口トラブルが74%に達している。
もちろん、そのトラブルの原因は、姓名が●で表示される、カードリーダーの認証エラー、マイナ保険証の有効期限切れ、負担割合の表示間違い…といった全く初歩的な欠陥によるトラブルなのである。金融機関のカードやETCカードでは考えられないようなトラブルがあるのは、マイナ保険証が未熟な欠陥品であり、紐づけとなるマイナポータルの情報保護機能にも信頼が置けないことを意味する。
同時に、こうした欠陥商品を無理やり流通させた政府に、被害者が損害補償を求めたとしてもマイナーカード規約で却下される可能性も否定できない。
そもそもいちいち顔認証や暗証番号で本人確認をしなければならないようなことは医療現場では起こりようがない。健康保険証1枚で、というより診察券の情報で十分であることは国民が熟知している。政府が健康保険証の悪用による不当利得を防止するために数兆円もの費用をかけるはずはないので、マイナ保険証の目的が医療費抑制(受診抑制や報酬支払抑制)にあることは論議するまでもないであろう。
総選挙の後になすべきこと
総選挙後の国会が直ちになすべきことは、国民の意向に沿って、まず保険証廃止という愚策を撤回(旧政権与党が面子にこだわるのであれば当面延期でも構わない)することである。そのうえで十分な時間をかけてマイナ保険証のシステムの欠陥チェックを行う必要を訴えたい。
このまま12月2日を迎えても、国民も医療機関もすぐに困ることはない。保険医協会はぶれることなく、保険証廃止の撤回を掲げて運動を継続する決意である。