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【2024.7月号】2024年「骨太の方針」の狙いは社会保障費の削減

 毎年6月に閣議決定で出される「経済財政運営と改革の基本方針」(“骨太の方針”)が公表された。
 “骨太の方針”とは、年末にかけて議論する次年度予算案や経済財政運営に対する基本姿勢を示す文書で、夏から秋にかけて各省から来年度予算の概算要求が出されるが、その根拠は「骨太」に書かれているかどうかで決まる。
 本来、近代国家としての健康福祉社会の実現というあるべき国家目標が、毎年の経済財政運営の元に従属させられることに根本的な問題があるが、今年の方針をみると、医療や介護に限ってみても、大きな問題が浮かび上がる。

現行保険証の廃止の理由とは
 「医療データを活用し、医療のイノベーションを促進するため…、政府を挙げて医療・介護DXを確実かつ着実に推進する。このため、マイナ保険証の利用の促進を図るとともに現行の健康保険証について本年12月2日からの発行を終了…」と明記された。
 ここでいう医療データとは、マイナ保険証でマイナポータルと紐づけしてある薬剤や特定健診等の検査データのことであろう。病名や検査内容と頻度等、診療点数は月々のレセプトデータですでにオンラインで把握されているので、この上に政府は何を収集するのだろうか。
 それが医療のイノベーションとどう関係するのか、全く説明がない。普通に考えれば、イノベーションとは難病のための創薬とか、iPS細胞の臨床応用等再生医療の新規開発などをイメージするが、そのためになぜマイナ保険証が必要なのか見当がつかない。なお医療・介護DXの促進は医療費適正化のためと正直に記載されている。

医師の偏在是正に経済的インセンティブ
 医師の地域間、診療科間、病院診療所間の偏在を是正するため、医師確保計画を「深化」させるために経済的インセンティブを導入することが明記された。要するに医師数の多い地域と少ない地域を分別し、地域別保険料に続いて地域別診療報酬で医師を分散させようという目論見を予想させる記載である。その次は医師数の不足する診療科への点数加算(充足している診療科は減算)も予想される。

介護では保険外サービスを促進
 介護保険で安心な老年期を迎えましょう、といった25年前の介護保険発足当時の政府与党の説明は完全に廃棄されたようである。まさに「保険あって介護なし」の時代が見えてきた。利用料の2割負担者を増やすこと、要支援者への給付外に続き、介護1、2の軽度者への生活援助サービスの給付制限も導入される可能性が高い。

 社会保障関係予算は安倍政権以来削減されっぱなしである。来るべき総選挙での国民の厳しい審判に期待する。