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【2024.6月号】歯科改定はアナログ派や小規模歯科医院にはきびしい改定- ベースアップ評価料以外で

はじめに
 今回の歯科診療報酬改定は、従来の項目の廃止・再編が多く特に施設基準に係わる部分が益々複雑怪奇になっている事、それに伴う算定要件である研修の追加による診療現場での混乱等が見られる一方、医療DX推進関係加算やICT(情報通信機器)を用いた加算に見られるデジタル推進、訪問診療の細分化、原則自由診療の矯正に対する相談料の保険導入等問題が山積している

「か強診」から「口管強」へ
 「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)」が廃止され「口腔管理体制強化加算(口管強)」に改変されたが、口管強届け出医療機関でしか加算出来ない点数が増加しており一物二価の格差を広げる診療報酬体系が拡大した。当然患者負担にも格差が生じている。

医療DX推進体制整備加算
 現在は経過措置があるが、電子処方箋発行体制や電子カルテ情報共有サービスの活用等の体制整備を行った医療機関への加算の新設もそれなりの投資を行った医療機関でなければ算定出来ない。

ICTを用いた加算の新設
 患者の印象採得(型どり)等で歯科技工士にICTを用いて口腔内の情報を共有し補綴物の制作を行った場合の歯科技工士連携加算2、在宅分野でもICTを用いて関係職種と診療情報等を活用した場合の在宅歯科医療情報連携加算、口腔領域の悪性新生物の術後の経過観察等で遠方の専門的な診療を行っている歯科医師とビデオ通話で情報交換する際の歯科遠隔連携診療料等、ICTを用いた加算や診療項目が新設されたが、ICTを使いこなせないと算定は困難であろう。

歯科矯正相談料
 学校歯科健診等で咬合異常があると判断された患者に矯正治療の適用の可否を判断する診断料が新設されたが、保険適用の先天疾患由来の咬合異常は極めて少なく相談料の算定が行われた殆どは適用外になる事が容易に想像出来る。つまり、本人や保護者は保険適用に期待を寄せても適用外と診断されて自由診療とならざるを得なく落胆するケースも出るであろう。このような手法は如何なものか?

さいごに
 歯科医療に限らずデジタル化は時代の流れであり世の中が便利になることに寄与する事は誰もが認めることであろう。しかし、多額の設備投資や運用に差が出る事は問題である。また同じ治療であるにもかかわらず点数(負担金)に差が生じることも医療の公平性から問題である。今後医療の原点に立ち返った診療報酬体系を期待したい。