主張

ここから

【2020.9月号】新型コロナ重症者用病床確保と救急救命医療体制の再点検を急げ

全国的にも、また県内でも新型コロナ(COVID-19)の感染拡大が止まらない状況である。現在の拡大が第2波かどうかは別として、インフルエンザ流行期と重なる12月から来春にかけての感染者受け入れ体制の整備が必要になっている。
 ここで心配なのは、重症化が心配される基礎疾患のある患者や高齢患者への対応である。このためにもCOVID-19用の入院病床確保の手を緩めることはできず、若い軽症者の発生数の増加にだけ眼を奪われてはならない。
 現在、県内の感染症指定医療機関の病床は48床に過ぎない。もしこれが不足した場合、各指定医療機関は一般患者用の病室を一時転用して対応する以外ない。8月のCOVID-19入院患者が40人前後いたことを考えると、第2波で感染者が倍になると予想した場合、かなり逼迫した状況も予想される。
 すでにマスコミでも取り上げられているが、COVID-19患者を受け入れた病院の大幅な減収が明らかになっており、たとえ公的病院でも独立法人など独立採算を迫られてきた病院への財政的支援が必要になっている。これは第二次補正予算の対象になるようだが、支援方法などを巡って政府の対応はもう一つはっきりせず、病院関係者に不安を与えている。
 今後のCOVID-19患者増を考えての病床の確保はすでに準備中と報道されているが、一方で心配なのが一般患者の救急救命医療に影響が及ばないのかどうかという点である。
 現在県下には11箇所の救急救命センターがあるが、そのうちの3箇所(いずれも県西部)は感染症指定医療機関でもある。これらの3病院は日常的な心血管救急や高度外傷などに対応している病院なので、ICU(集中治療室)などを常に空けておかなければならない。もしもCOVID-19患者で数に限りのあるICUや重症者用個室に余裕がなくなると、医療崩壊にならないという保証はない。これを避けるためには、2018年7月現在で県内4,900床ある高度急性期病床を保有する病院間の連携が欠かせないわけである。
 県内でも賀茂、熱海伊東、富士などの圏内人口が少ない医療圏には救急救命センターがない。近隣の高度急性期病床を持つ病院へ搬送できないと命に関わることにもなる。
 なお、当県では人口100万人あたりのICUを持つ病院数は4.9となっており、全国平均の6.2と比べると8割に満たないという低さである。このことはCOVID-19対応と同時に、県として救急救命センターの体制強化を図っていく必要があることを示している。救急救命センター以外の地域中核病院でもICUベッド導入を是非検討すべきであり、県としての財政的支援を行って推進してほしい。
 当県では大規模自然災害も想定されているわけで、感染症対策のみならず、ICUの整備目標を定めるなど、第8次県保健医療計画(2018~2023年)の中間的見直しが必要ではないだろうか。
 報道によれば、県はCOVID-19の医療体制の強化と通常の医療体制の確保の両面を協議する医療専門家会議を8月中に設置する方針を決めたとのことである。川勝県知事は「長期戦を見据えて検討したい」と説明されたようだが、COVID-19襲来を契機に、遅れている静岡県の感染症対策の拡充と集中治療室の拡充を強く要望したい。