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【2020.10月号】マイナンバーカードの健康保険証との紐付けは無用である


 最近の政府広報をみると、来年3月からマイナンバーカードを健康保険証の代わりに使うことができるので、国民にカードを取得するように勧めている。
 すでにマイナンバー制度(社会保障・税番号制度)そのものは、国民一人ひとりを識別する個人番号を付与するものとして7年前から法的な義務付けがされていることは周知の通りである。
 保団連はマイナンバーカードと健康保険証との紐付けには一貫して反対してきたが、その主な理由は個人情報の保護に不安があること、医療機関に無用の負担を強いるものということである。
申請によって個人に発行されるマイナンバーカードにはICチップが組み込まれており、このICチップ上で顔認証情報や健康保険証を読み取り、オンライン上で被保険者の資格確認をリアルタイムに行うということである。
したがって保険医療機関では、受診者が健康保険証の替わりにマイナンバーカードを持参した場合、窓口に読み取り用端末機(カードリーダー)を設置しておくことが求められるが、同時にその情報をオンライン上で確認するシステムの準備が要求されることになる。
当然、このことと関連して、医療機関としては窓口会計やレセプト作成用のシステムとのネットワークの改修やそのための職員の訓練も必要になる。
カードリーダーの購入に限らず、こうした一連の電子請求システムの改修に対し、厚労省は導入のための諸費用、諸経費に補助金を出すと言うが、全国の医療機関が一斉にこうした準備を始めた場合の混乱が目に見えるようだ。
詳細は厚労省HPや支払基金のポータルサイトに提示するというが、これだけの労力と負担をかけて、被保険者資格のオンライン確認作業を行ったとして、何が得られるというのであろうか。利益を受けるのは明らかに一部のIT産業だけではないのか。
医療の現場から見れば、確かに保険証の資格や期限切れの確認に役立つという意見もあるかもしれない。しかし窓口でのオンライン確認で思いがけず「あなたの保険証は無効です」となった場合、どう対応するかはこれまでと同様に現場の負担になるのはかわらないし、窓口未収金も減らないであろう。
マイナンバー制度そのものが、政府が言う通り社会保障・税番号制度である以上、税や社会保険料を納めていない、資格なきものは社会保障の給付から外すという性格のものである。しかし現実に保険証は忘れたが、マイナンバーカードは持っているという受診者がどれほどいるだろうか。高齢者がマイナンバーカードを紛失したり、誤って廃棄するリスクも心配される。マイナンバーカードの本人なりすまし防止効果で何かと便利だと思う国民がどれほどいるだろうか。こうしたカード上の電子情報では、ICチップ上にいろいろな紐付けがされるたびに個人情報の漏洩のリスクが高まることは専門家も指摘しているところである。
マイナンバーカードを取得するとマイナポイント制度という、最大5千円の割引がつく国主体の消費促進制度が8月から始まっている。ちょうど保険証の利用が始まる予定の来年3月の末までの期限であるが、これが社会保障・税番号制度とどう符合するのか全く不明であり、一方で新型コロナの影響で失職し、収入減少で苦労している国民も少なくないことをみると、収入があり消費できる人への実質減税という片手落ちの感がある。
マイナンバー制度は脱税を防ぐので良いのではという意見もあるようだが、少なくとも現段階では所得税や法人税の税収増の効果が出ているという話はあまり聞かない。
こうした電子カードシステムは若い人には便利なようではあるが、社会的情報弱者をますます疎外させていく可能性を持っていることも指摘しておきたい。