【2020.7月号】コロナに負けない少子化対策の基本は経済的、社会的支援策の充実だ
去る6月5日、厚労省が発表した人口動態統計によると、2019年の静岡県の合計特殊出生率は1.44で、2016年の1.55から3年連続低下した。わが国の少子化の進行という止められない現実は、新型コロナ感染対策の影に隠れてしまっているが、国の将来に係る社会的問題であることは誰も否定できないであろう。
折しも6月12日に閉幕した通常国会では、新型コロナ対策のための総額31兆9千億円の第二次補正予算が成立したが、妊産婦等への支援の強化として177億円が計上されているものの、この時期に国民に希望をもたらす少子化対策が後景に追いやられているのは誠に残念至極である。
この少子化問題では、昨年11月に県が公表した「静岡県少子化対策に関する県民意識調査結果」が基本的な問題点を明らかにしている。
この調査は質問表形式で、県民の20歳から49歳までの若い世代1,000人余りから回答が寄せられている。主な内容を紹介すると、平均の理想子ども数は2.43人(圧倒的多数は2人ないし3人)、しかし予定子ども数は2.07人と減少している(0~2人が多い)。これが冒頭紹介した合計特殊出生率が1.44に留まる一つの理由となっているのであるが、予定子ども数が理想子ども数を下回る理由の1位は「子育てや教育にお金がかかりすぎる」が48.4%とほぼ半数あることである。ちなみに2位は高年齢が理由になっているが、初婚年齢が高くなっていることの反映であろう。
また、子育て支援で重要と思う施策はなにかという質問に対して、1位が子育て世帯への経済的支援(39.1%)、つづいて2位が仕事と生活の調和(柔軟な勤務制度)、3位が教育費用の軽減、4位が保育所や放課後児童クラブの充実という回答が並んでいる。
内閣府の資料で諸外国の政府支出と比較すると、高齢者対策関係政府支出に対して家族関係(中心は少子化対策)政府支出の比重が高いほど、合計特殊出生率が高いという正の相関関係が成り立つという報告にもある通り、西欧諸国ではまさに経済的社会的支援が少子化対策の中心になっている。フランスや北欧はそれで出生率が高いのである。
もちろん若い人がすべて結婚願望があるわけではないし、非婚の理由も様々あることは社会的に受け入れられるべきであるが、結婚して子育てをする意欲のある夫婦への支援は先進諸国共通の課題となっているのである。
ちなみに、令和2年度の本予算での少子化対策費は2兆9千億円程度で、新型コロナ用の予備費10兆円の3割にも満たない。この使い道不明のコロナ関係予備費を削り、児童手当の増額、奨学金の充実など少子化対策費=未来への投資に思い切って充当すべきである。こうしてこそコロナ禍の暗い世相が明るくなり、未来に希望を持てる社会になるであろう。