主張

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【2020.4月号】新型コロナウイルス感染症対策で県民の生命を守らなくてはならない

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が4ヶ月目に入ろうとしている。マスコミ報道では、中国、韓国に続くイタリアをはじめとする欧米諸国での急速な拡大状況とわが国を比較し、専門家会議での「我が国の医療の質の高さを示唆している」という評価を喧伝しているようである。しかし、地域医療の実情をみた時にそんな手放しの評価でこの状況をみているとしたら危うい。
 ある日の地元TV放映では、当静岡県関係の発病者が少ないのは、「県民の健康水準(免疫力?)が高いからでは?」などという根拠のない話が出ているようだが、わが県がこの流行に巻き込まれないで済む保障はないのである。
実際、地域の医療機関のほとんどはこの新型コロナウイルスへの防備体制を十分に持っていない。発症者の過半数が軽症で、さらに一定数の陽性者が2週間近く無症状であることから、いつ私達の前に現れてもおかしくない状況に置かれている。
 ようやく県内のPCR検査の体制が少しずつ改善されてきたとはいえ、患者が目の前に現れたとき完全に防護できると言い切れる医療関係者はどれだけいるだろうか。
 3月上旬に行った協会の緊急アンケートでも、1ヶ月先の医療用マスクやアルコール等の手指消毒剤の備蓄があると答えた医療機関は3割に満たないのは実情である。まさに医学的根拠を持って防護していますという実態には程遠いのが現状である。今県内の患者数がこの程度で収まっているのは幸運としかいいようがない。
 この危機的状況は少なくとも半年は続くものとみられている。今からでも急いで整備する必要な手立てとはなにか、県や自治体当局者に考えていただきたいことがいくつかある。
 第一は必要な情報の公開である。どれだけの人が帰国者・接触者相談センターや医療機関を通して検査を受けたのか、日々公表すべきである。コロナ陽性者数の公表も大事だが検査数の公表の方が県民にインパクトがある。自分が検査を受けるべきかどうか迷っている人の背中を押すことになるからである。
 第二に、二次医療圏ごとに熱・咳外来を設けるべきである。もちろん外来を非感染者ときちんと分離できるだけの広さを持つ医療機関を指定し、予約制で受け入れるべきである。ここでは医療者の感染防護のために、例えば仙台医療センター・ウイルスセンターが開発した防護服のいらない発熱外来のクリーンブースを早急に取り入れるべきである。
 第三には、そして最も大切なことであるが、県と政令市の保健所相談センターの人員を臨時にでも増やして、県民への旺盛な啓蒙広報活動に力を注ぐべきである。
 相談電話への迅速な対応、感染者が発生した場合の濃厚接触者への人権を配慮した調査と対応、孤立させないための県民への啓蒙活動など、やることはたくさんあるはずである。もちろん咳対策や手指衛生、室内環境衛生などの普及活動も重要である。多くの県民がスマホ使用状況にあることから、県民が常時アクセスできる特設サイトも設置することもできよう。
 いずれにしても新型コロナウイルスとの戦いは始まったばかりである。十分な人材と知恵を結集して、COVID-19を克服しようではないか。その教訓は、今後の新型インフルエンザウイルスを迎え撃つためにも大いなる遺産となるであろう。