【2020.3月号】新型コロナウイルスPCR検査の普及を急げ!県は県内検査機関の情報の速やかな公開を
昨年12月からの、中国・武漢の海鮮市場に端を発した流行性肺炎の原因となっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が国内蔓延化の様相を呈してきた。各国の対応が注目される中、世界的なパンデミックの可能性も取り沙汰されている。
今、わが国にとって最も遅れている重要な対策はなにか、それはCOVID-19の確定診断法であるPCR検査の速やかな普及である。このことがCOVID-19による犠牲者を最小限にするために、今最も必要な医療上の課題であることは明らかであろう。
ところが実態はどうなっているのか。2月26日の加藤厚労相の国会答弁で、それまで一日あたり3,830件の検査が可能と説明していたにもかかわらず、一日当たりわずか約900件のPCR検査を把握しているに過ぎないことが明らかになった。
これは世界各国の対応の現状から見ると驚くべき低い数字である。中国に次いで流行国になった韓国では、2月25日だけでも一日で7,548件の検査が行われたと報道されている。
専門家のコメントを参照すると、今の日本でPCR検査の可能な民間のラボ(検査所)は約900箇所、そこで平均100件の検査を行えばそれだけで約9万件の検査が可能だという。政府がこの期に及んで民間ラボに任せないのは、未だ保険適用のない検査費用の負担問題と、政府予算が付いた国立感染症研究所傘下のラボしか行えないような閉鎖的システムにあるという。
何れにせよ政府系機関のラボでも1週間で3万件近い検査能力があることは厚労省自身が確認していることであり、問題は政府が危機意識を持って取り組めるかどうかの問題なのである。
今国民が心配しているのは、風邪症状が長引いて体調が悪いのはもしかしてCOVID-19ではないか、自分が感染媒介者になって家族や周囲に広げていないか、ということである。この心配は医療従事者も同じである。武漢ではこれまで多くの医療従事者が感染し、二桁の死者も出ている。ということは医療者自身が罹患するだけに終わらず、多くの患者を作ってしまった可能性を否定できない。医療者が体調不良に陥ったとき、すぐにPCR診断ができないと高齢者や基礎疾患のある患者にCOVID-19を広げてしまうことになる。
今怖いのは、診断がつかず、決まらないまま市中に放置されてしまうCOVID-19 罹患者が増加することである。この問題の解決は、早期隔離につながる早期診断にあり、PCR検査がその唯一の方法である。今もって決定的な抗コロナウイルス薬は未開発だとしても、有効と期待される治療法も報告され始めている。PCR検査を大至急普及させ、早期隔離、早期治療につなげることが喫緊の課題なのである。PCR法の保険適用も緊急対策措置として即実施すべきである。
静岡県当局、政令市当局には県内での蔓延を防ぐため、当面次のことを望みたい。
1 医師が必要と感じたときにPCR検査可能なラボを紹介するシステムの早期確保。
2 軽症の感染者は自宅ですごしてもらうとしても、肺炎の疑いが生じた場合の後方入院ベッドの確保のための対応。
3 高齢者施設、介護施設へのマスク、アルコール消毒液等の公費提供。
何よりも、県知事はじめ担当部局の危機意識の徹底と、県民へのわかりやすい広報、電話相談をはじめ、行政と各種医療機関の有機的な連携体制を築くことが必要である。