【2018.8月号】安倍さん、所得が増えないのに消費税上げるのですか?介護人材不足はどうしますか?
暑い夏、集中豪雨で水害や土砂災害、そして熱中症。1億2千6百万人、日本人みんなが疲れている。だが国会では、今まで以上に残業増を認める働き方改革が、カジノ誘致が成長戦略になるなどといって与党の数の力で押し切った。挙句の果てに憲法違反の疑いもある党利党略の参議院定数増を突然成立させた。与党議員は慢性熱中症かと疑いたくなる。
野党も、国民の眼が覚めるような日本の将来にかかわる議論をもっと展開すべきだったが、報道を見る限りそんな議論はされていない。モリカケ問題で安倍退陣を狙ったにもかかわらず首相どころか一人の大臣も辞任せず、辞任したのは政権に忖度した一部官僚やセクハラの官僚だけである。
国民の生活水準はどうか。実質賃金はこの20年下がり続けている。今や雇用者の7割が非正規雇用である。これでは健康保険料収入は増えない。景気が良いのか悪いのか、輸出関連企業を中心に来るべき円安に備えて人件費を削ってさらに内部留保を積み上げている。識者によればその内部留保は投資資金に回るだけで、企業自身の将来の体力、技術開発や産業基盤の強化には役立っていないという。日本の優れた技術が後発の中国企業に買収される一方で、内部留保やマイナス金利に乗じた外国企業の買収で自らの技術開発をあきらめる一流企業もあるという。
銀行はゼロ金利、マイナス金利政策のあおりを受けて消費者金融と組んでのカードローンに走り、投資の当てのない資金をだぶつかせ、低金利にあえぐ預金者に様々な信託投資を薦めている。市中銀行や企業の国債購入も金利がつかないからリスクが大きく、株や国債の暴落を食い止めようと日銀が爆買いしている。なにか世紀末のような不安がある。
こんな日本なのに、安倍さんはなんで安泰なのか、わからないことだらけである。
今、二つの喫緊の問題がある。1年後に控えた消費税引き上げと、今後の深刻な介護人材不足である。
消費税はそもそも社会保障の充実に使うと公約して30年前に始まった税金であった。5%になるときも、8%になるときも同じ理屈で増税された。それでも社会保障は良くならず、負担増だけが進行している。国民はますます将来に不安を感じ、所得の低下に備えて財布のひもを締めている。国税としての消費税収入は所得税や法人税をしのぎ、今や第一位の基幹税収となっている。
だが消費税引き上げの副作用は大きい。消費の後退はGDPの後退になり、社会保険料の減収にも直結してしまうことになる。それでも消費税を上げるのだろうか。むしろ下げなければならないのではないか。
さらに介護人材不足が差し迫っている。団塊世代がすべて75歳以上になる7年後の2025年、厚労省は介護職員が33万人不足し全国平均での予測充足率は86.2%という。今でも不足している事業所がほとんどなのにいっそうの不足である。
こうなると介護保険制度はどうなるか、保険(徴収)あって給付(介護)なしになってしまう危険がある。そうなったとき、介護施設に入れず在宅になる親を放っておけない日本人の介護離職が一層進行する。生活はわずかな年金と預貯金に頼り、所得と消費の低下になっていくのはあきらかである。
どんな対策があるのか、国民の眼を覚ます国会での議論を要求し、その結果が次期国政選挙に反映されるよう、注視していこう。