【2018.9月号】社会保険診療消費税のゼロ税率実現こそ
去る7月25日の中医協・消費税負担に関する分科会に厚労省が提出した「控除外消費税の診療報酬による補てん状況調査」報告で、平成26年4月の消費税3%引き上げの補てん状況を検証する前回調査でデータ上の集計ミスがあったことが医療界を直撃している。
その集計ミスとは、DPCという診療報酬計算方式をとっている病院の集計で生じたミスであるが、修正前の補てん率が病院全体で102.4%とされていたのが実際は82.9%だった、つまり診療報酬への消費税上乗せが20%も不足していたというのである。これは前々回の診療報酬改定からのものなので、4年間も補てんがされていなかったのであり、病院団体は総計で888億円の損失(損税)になったと発表した。
そもそも社会保険診療が非課税であるはずなのに補てん率の計算が必要となっていること自体が不要な非生産的作業である。しかもこの調査がサンプル調査であることや、個々の医療機関ごとの診療内容が異なり消費税支出もばらつきがあることから、厚労省自体がその限界を認めている世界に類例のないシロモノである。にもかかわらず、厚労省は診療報酬の改定ごとに診療報酬には適正に上乗せを行っていると強気に言明してきた。
今回の不祥事は働き方改革法案で示されたねつ造データと同様に、厚労省官僚の弛んだ仕事ぶりを示すもので、安倍政権の下で生じている政府官庁の道義的堕落を示すものに他ならない。
問題はこれからである。この損失は消費税負担の増大という、とりわけ病院経営の困難性の一因という形で地域医療の構築にも大きな影響を与えてきた問題である。
いうまでもなく消費税は今や所得税や法人税を抜いて国税収入のトップを占めるまでに至っており、医療機関の「損税」は財務省にとって手放したくない財源となっている。
一方で輸出企業に還付する輸出割戻し税(還付金)は8%になった翌年の平成27年度で4兆4700億円(全消費税収入17兆2000億円の約26%)にもなっている。こうした還付実務は税務署がきちんと行っており、医療にゼロ税率が導入されても実務的には一向に困らないシステムがすでに存在している。
保団連等が主張しているゼロ税率ならば医療機関に消費税負担はなく、保険診療患者の負担もなく、国の徴収業務もないというプラスばかりなのである。
今こそ医療界がゼロ税率で一致して厚労省や各政党に強力な働きかけを行うときである。