【2018.7月号】浜岡原発の再稼働をあきらめさせよう
東日本大震災により生じた福島第一原発の炉心損傷と環境放射能汚染事故で、当時の民主党政権が要請した浜岡原子力発電所の運転停止から満7年が経過した。
その理由は、30年以内の発生確率が87%という東海地震・東南海地震の震源域に立地する浜岡原発の危険性が強く認識されたからである。
その後の7年の間に中部電力は4,000億円の費用をつぎ込んで、海抜22メートルの防潮壁を完成させ、福島原発で失敗した原子炉への注水装置の改良や非常用電源の確保策などで安全性が飛躍的に高まったと宣伝している。そして再稼働に向けて、原子力規制委員会に対し2014年2月には4号機、2015年6月には3号機の安全審査の申請を行い、現在審査が行われている最中である。
原子力規制委員会での再稼働が認められるかどうかの審査の焦点は、原発が立つ岩盤下の活断層の存在や、近くの伊豆・小笠原海溝の海底火山帯の影響評価に移っていると報道されている。
中電は何本かある活断層を意識してタービン建屋や原子炉建屋など地上構造物を引き離しているために、その間を結ぶ配管が長くなり、地震の揺れによる配管損傷の恐れが特に高い原発になっていると指摘する専門家もいる。また専用港がない唯一の原発で、そのため沖合600メートルにある取水塔からの海水を冷却水として取り込む構造のために、津波発生時の潮力や船舶等の衝突による配管損傷の危険性が指摘されている。実際これまでも海岸に通じる排水溝から配管内への砂による流入事故が発生している。
私たち医療関係者が再稼働に際して最も関心を持つ問題は住民の避難計画である。UPZといわれる原発敷地から31km圏内には約90万人の県民が居住している。比較的過疎地だった福島原発の周辺地域に比べ、学校や幼保施設、医療施設や介護施設も数多い。福島事故の教訓に照らせば、放射能漏れを生じた場合には、事故時の風向によって生じるホットスポットを避けるための避難計画がリアルタイムで必要になる。そんな浜岡周辺の主要道路は少なく、また狭く、風向きに応じて住民が速やかに避難する経路としては全く不十分である。またこの圏域には東名高速道路や新幹線の一部も含まれる。
そもそも、巨大地震が確実に予測されるトラフ上に位置するという地質学的理由に加えて、社会人口学的にもこうした地域に原発は設置すべきではないということである。
今、日本全国どこを見ても電力が不足している事実はない。原発の交付金をあてにした立地の地域振興は福島を見ずともほとんどは幻想に近い。
1兆円かかって着工から32年で廃炉になった「もんじゅ」の敦賀も、着工から20年かかってもまだ完成しない核燃サイクル再処理施設の青森六ヶ所村も、住民のために大きな利益をもたらしてきたという話は聞かない。
今こそ原発から潔く撤退し、浜岡・御前崎地域を自然エネルギー、再生可能エネルギーの一大基地に転換させることこそが真の地域振興になるのではないだろうか。