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【2017.5月号】国保が県民の健康を守る砦となるために

 今、国保が大きく変わろうとしている。来年4月から、これまでの市町による国保運営から、「安定的な財政運営」と「広域化及び効率化の推進」を目的とした県による事業運営が始まるからである。  
 これまで国保財政の大きな問題とされてきたのは、実質収支上の赤字構造である。というのは市町の予算(一般会計)からの繰り入れで埋め合わせをして、見かけ上の黒字を作っている実態があるからである。またそうしなければ住民である被保険者への医療の提供ができない構造になっている。
 国保の万年赤字の原因はなんだろうか。組合健保や公務員共済が実質的な赤字になっている訳ではないから、決して医療費が高いためではない。先進諸国の中でわが国の医療費が低いことは周知のことである。
 国保の財政赤字の最大の理由は、運営上大きな問題があるわけでもなく、保険料と国庫支出金による収入が少ないという簡単な理由に帰結する。
 では保険料を上げればよいかというとそうはいかない。国保保険料は世帯人員にもよるが所得の10%を超える場合も少なくなく、国民年金しかない低所得者でも収入の5%を超えるであろう。そのほかに介護保険料も負担しなければならない。これ以上の保険料の引き上げは収納率の低下を招くだけである。
 国保収入には公費負担金を上回る前期高齢者交付金という保険者(協会けんぽ、組合健保、共済組合など)からの拠出金もあるがこれも今でも現役世代の大きな負担となっており、これ以上増額すべきものではない。
 必要なのは国庫支出金の増額であり、もちろんこの財源は税金であるから、負担できる人や企業が応分に負担するというだけのことである。
 国保加入者のほとんどは零細自営業者、農漁民、それと年金生活者であり、他の健保にある雇用者の半額負担もなければ扶養者への優遇もなく、傷病手当金や休業給付もない人々である。しかしこれらの人々は国民の食料確保にはなくてはならない存在であり、自営業者や年金生活者の存在なくして地域の暮らしや生活は成り立たないのであり、その健康を守る砦が国保なのである。
 1958年に市町村による国保運営が始まり、61年に国民皆保険制度が成立して医療は国民のものになった。2018年からの新しい国保運営が決して財政の帳尻合わせになってはならず、公費で支えられる国民のための制度でなければならない。