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【2017.4月号】地域医療構想に欠かせない視点とは何か~国・自治体の財政的支援が欠かせない

 昨年3月、県は医療審議会の答申を経て、厚労省のガイドラインに従った地域医療構想をまとめた。協会として策定時にはパブリックコメントを提出したが、この構想は高齢者人口が110万人(総人口の31.6%)に達する2025年までの期間を想定した医療需要を推計し、必要病床数を推計している。
 この構想は「計画」ではなく「構想」であって、上からの強制ではなく医療機関の「自主的な取組」を促すものとされており、県や行政はその協議・調整の場を設定して推進していくということである。
 この構想の2025年度必要病床数の推計によれば、当県は平成27年度基準でみると、高度急性期病床や急性期病床が合わせて5500床余りの過剰であり、回復期病床が4700床余り少ないが慢性期病床が3500床ほど過剰という推計である。したがって単純に言えば10年間で4300床ほど病床を削減されると推計されている。
 ただし2025年の推計には急性期病床にいながら低点数の患者や、療養病床(慢性期病床と同じとして)で医療区分1(軽症)の患者の70%は含まれておらず、その部分は推計上「在宅医療等」として病床数から除外されている。
 ということは、今後10年間は病院病床でなく、サ高住や介護施設を含む「在宅医療等」に含まれる患者の増加が見込まれているのである。これが「ほぼ在宅、ときどき入院」を柱とした医療構想の肝(きも)である。
 ここで重要になっているのが「地域包括ケアシステム」であり、「ほぼ在宅、ときどき入院」が実現するかどうかのカギとなっている。つまり地域医療構想は「地域包括ケアシステム」という在宅患者の「受け皿」がないことには成り立たない。しかもこの「受け皿」をつくるのは医療機関や介護事業者の協議・調整であり、行政ではないようだ。
 「ほぼ在宅、ときどき入院」の考えは決して悪くはないが、これが成り立つために何が必要だろうか。医療関係者や介護事業者が知恵を出していかないとこの構想は画に描いた餅になってしまう。
 そこで重要なことは県や自治体の長期的な後押しであり、医師や医療機関に過重な負担を押し付けないことである。地域包括ケアシステムがうまく運用されるためには、この中で職種間の横の連携が取れ、住民の理解や自治体などの調整能力が高まることであろう。
 中には軽症でありながら、独居であったり家族介護力が不十分なために「ほぼ在宅」が困難な患者も少なくない。こうした場合には施設介護の利用が不可欠であり、「ほぼ施設、ときどき入院」ということも十分ありうるわけである。
 医療関係者の連携では在宅支援病院(病床)の確保が重要な条件であろう。このためには自治体は公共事業に準じ病床確保に必要な財政的支援を考える必要がある。在宅支援の有力な担い手である民間病院への支援も必要である。
 地域格差の大きい訪問看護ステーションの確保も公共的な財政面での支援がなければ実現しないことを肝に銘じるべきであろう。