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【2017.3月号】次期診療報酬改定に向けて診療現場から声を挙げよう

 いよいよ次期診療報酬の改定をめぐって、政府・財務省と医療界の熱い戦いが始まる。
 今年に入って早々、経済財政諮問会議の民間議員4名からの提案が出された。この提案の中の一項「医療・介護をはじめとする社会保障改革」は、あくまで国の財政健全化のための提案であり、国民の健康や老後を充実するための方策ではない。
 その民間議員提案が出された翌日、厚労省保険局の「診療報酬の審査の効率化と統一性の確保について」という資料が公表された。
 これを見るとICT(情報通信技術)を最大限活用し、医師による審査などもコンピューターチェックシステムとし、AI(人工知能)を活用して医学的判断を要する審査も効率化し、レセプト情報などのビッグデータも共有化し活用する方策を考えよ、とある。
 最近では「データヘルス時代」だとして、ICTやビッグデータを活用し、保険者機能の強化とか医療の質を向上させることが厚労省の有識者検討会でしきりに強調されている。ここで示されている保険者機能強化とは「マイナンバー制度のインフラを活用し、支払基金・国保連が保有する社会保険・地域保険・介護保険レセプトデータを連結」することであり、マイナンバー制度を使ってビッグデータを集め、医療を効率化せよという話である。
 これは現在の医師による審査委員会制度に替わる仕組みをつくれということであり、ビッグデータにより構築されたAIで審査をせよというのである。こうすれば支払基金の集約化、審査委員会の縮小化で一石二鳥に医療費を節約できるというのである。
 次期診療報酬改定においてはこうした流れに沿った改定が予想される。今後、個々の患者に合わせたオーダーメイドの診療は困難となり、ビッグデータで規格化された枠にはまった保険給付の範囲に制約されることが考えられる。
 医師が患者の訴えを聴き、身体を診て検査や治療のプランを考える現場での知的労働が軽視され、例えば入院日数の短縮に有用で効率化された入院医療が求められ、例えば標準医療から過剰だと判定される外来診療も排除されていく仕組みが目に見える。
 そうなると診療報酬は疾病診断分類で包括化される道に限りなく近づいていくことになり、結局は低価格な点数に下げられることになろう。
 さらに、2月8日の中医協資料で明らかにされているように、外来受療率の65歳以上での減少(18年前に比較し24~30%のマイナス)や、1件当たり受診日数では45歳以上での減少(平均0.4日の減少)で、患者が医療から遠ざけられている実態がある。
 この傾向に歯止めをかけるためには、窓口負担の軽減と診療報酬の改善をセットで運動しなければならない。
 このように考えるならば窓口負担軽減の患者署名を訴えることも医師の社会的運動の重要な内容である。ぜひ会員諸氏のご協力をお願いしたい。