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【2015.5月号】次期診療報酬改定に向けて医療現場や地域の声を上げよう

 次期16年度診療報酬改定への議論を集中的に起こさなければならない時期になった。というのは、診療報酬改定に大きく影響する省庁からの概算要求が秋に予定されているからだ。
 ここでは主として医科診療報酬に関しての話になるが、先の14年度の改定の特徴は消費税引き上げに対応するための再診料の若干の引き上げと、政府が目指す地域包括ケアシステムの要というべき開業医の主治医機能を評価したという「地域包括診療料」と「地域包括診療加算」の新設であった。このうち、「地域包括診療料」は常勤医3人以上の体制が条件であり算定できる診療所はごく稀である。では圧倒的多数の1~2人開業医にとって「地域包括加算」なる受診1回につき20点の加算が現実にどういう意味を持ったかである。
 これは4つの疾患(高血圧、糖尿病、脂質異常、認知症)のいずれか2つ以上についての生活指導や薬剤管理、介護保険対応、在宅医療を行うこととされる。
 しかし、これで病院(川上)から在宅・居宅(川下)への流れの道筋が出来たかと言えば全く別である。4疾患の有無に関係なく、病院で寝たきり状態になった患者が現実に在宅・居宅で過ごせるかどうかは、24時間対応が出来ているかどうかや点数の問題ではない。それ以前に地域の医療・介護資源と家族の条件に左右される問題であって、高齢者のみの世帯が激増している中で医療者がどこまで責任を果たし得るか、あまりにも課題が多すぎる。わずか20点で責任を負わされてはかなわないという声が多い。
 こうした地域の医療・介護条件の充実・充足を図ることなく、ただ診療報酬点数上のインセンティブを先行させても現場では絵に描いた餅である。厚労省幹部は「これからは医療モデルではなく生活モデルへの転換だ、地域包括ケアシステムの構築には、診療所医師がキーパーソンとなり、多職種共同で取り組むことが必要だ」というが、今年度の介護報酬の引き下げは逆走以外の何物でなく、全く反省の色なしだ。
 入院では7対1入院基本料の算定要件の厳格化で「急性期病床は退場しろ」というメッセージと受け取った病院関係者が少なくなかった。だが、2014年3月時点で約38万床だった7対1病床から他の病床に移行したのは、10月時点でわずか2.8万床にとどまる。病床移行が医療機能全般の後退につながることを恐れた当然の結果である。医師から看護師まで人手不足の病院にとって、「行くも地獄、引くも地獄」だといわれる実態は財政緊縮策の下では変わらない。結局、保険料を懸命に払っても受けられる医療・介護は制限ありの時代となり、しわ寄せを受けるのは患者だ。
 2025年に向け、安全で安心な医療のためには何が必要か。それはすべてを緊縮財政から始める政策の抜本的転換である。選挙の公約通り、年間6兆円を超える消費税アップ分を社会保障に使うことで国民の安心は一挙に高まる。まさに今秋に向けて、消費税は社会保障にまわせ!の声を津々浦々に響き渡らせようではないか。