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【2015.3月号】国保は国民皆保険制度の土台、「改革」の基本は国の補助率を戻すこと

 今、国保の財政運営が都道府県に移る2018年度に向けた準備が着々と進められている。最近発表された国保の2013年単年度決算での赤字は3千億円を超えるが、これは自治体の一般会計からほぼ同額の繰り入れがされて穴埋めされている。
 国保の収入上、国庫支出金は3兆3千億円で、収入(=支出)全体の約23%になるが、これは国保制度の全国的整備で国民皆保険制度が成立した当時の約49%に比べ、半減以上の削減になっているのが実態である。
 また都道府県別の収納率を見ると、全国的には90.4%で、最高が島根で約94.9%、最下位は東京の86.2%、ちなみに当県は90.6%で平均並みである。収納率が100%になれば、3千億円を超える収入になるので、未納分を自治体が一般会計から繰り入れて赤字をしのいでいる構図ということになろう。
 この赤字問題の本質は、国保発足50年の間に半減された国庫補助金と、高い保険料負担である。国民皆保険成立の鍵であった国保制度運営の最大の問題は、多様な被保険者の保険料負担の問題であった。当時の地方議会や国会での論議で明らかなように、国保が社会保障制度の一環であることから国庫支出金が設けられたにもかかわらず、保険料負担は増加する一方で国庫支出だけが財政緊縮政策のターゲットにされて削減されてきたのである。
 一部に、赤字問題の原因を高額化した医療費(診療報酬)にも求める動きがあるが、これは大きな誤認である。診療報酬は歴代政府によって低医療費政策の下で常にGDPの成長以下に抑え込まれてきたのであり、国庫支出が削減されていなければ、そして高い保険料のために未納世帯が増加しなければ今でも国保は健全運営ができているのである。
 最近では、国保料滞納世帯に対する差し押さえ件数も急増している。国保滞納世帯を「悪質な」滞納者とみるのは一面的であり、年間所得の20%前後に及ぶ高い保険料を払えない世帯が増えているのである。この原因の一部は非正規労働者の急増にあると思われ、定年退職後の65歳から74歳までの低所得高齢者の急増も背景にある。
 ちなみに、きょうかい健保の保険料率は10%平均だが、労使折半なので労働者負担は5%である。世帯所得の平均10.5%にもなる国保保険料がいかに低所得者を直撃するか、想像してみてほしい。
 このように保険料を100%負担している国保加入者の状況を無視した国保運営の広域化は、さらなる保険料負担の上乗せを否定していない冷酷な「改革」である。
 農民、漁民、中小商工業者、定年退職後の年金受給者、開業医師や歯科医師、こうした人々はこれまで長きにわたって国税を納めてきた人々であり、国の産業や国民生活を支えた「準公務員」なのである。こうした人々に所得再分配としての国保への国庫支出は社会保障制度の確立のために必須であり、国民経済の活性化にも欠かせない。
 国保制度の国庫支出を元に戻し、本来の国づくりに立ち返ることが求められている。