【2013.2月号】生活保護費の切り下げは健康水準の低下につながる
先の総選挙では生活保護費の10%カットを公約した自民党が「圧勝」した。この勢いを利用したように、1月18日の社会保障審議会の生活保護基準部会が、現行の生活保護基準額と低所得者世帯の生活費(支出額)を比較した調査結果を公表した。
ここで生活保護支給世帯と比較された低所得者世帯とは、所得階層を10等分して一番低位の第1・十分位の世帯である。この中には高齢者単身世帯、高齢者夫婦世帯、母と子1人世帯などに加え、夫婦と子が複数の世帯も含まれる。
この第1・十分位世帯の平均所得は中位所得世帯(第3・五分位世帯)の約6割であり、OECDの国際的基準でいえば大部分が相対的貧困(可処分所得が全人口の中央値の5割未満)に属する階層であることが明記されている。
この調査によると、食費や被服費など個人的消費である第1類費では、生活保護支給額が第1・十分位世帯の消費支出額より最大で33%多い(5人世帯の場合)。逆に水道光熱費や家具什器費など世帯共通経費である第2類費では29%少ないという結果である。
この結果、夫婦と子二人世帯の平均生活保護支給額は同じ構成の第1・十分位世帯の支出額を14.2%上回っているというのである。だから10%生活保護費を削減してもおかしくないという論理である。なお、逆に高齢者世帯では生活保護支給額の方が数%少ない結果である。
しかしこうした結果を根拠にして生活保護費を引き下げるのは妥当なことであろうか。
生活保護世帯の食費支出が多く見えているのはあくまで相対的な結果であり、比較された低所得者世帯の食費があまりにも少ないという実態に目を向けなくてはならない。この階層には生活保護基準相当世帯でありながら捕捉されていないのが現実である。
またこの低所得者世帯は往々にして日々の食費を削って暖房などの光熱費を確保していること、これらの費用が公共料金として低所得者に重く、食費以上に節約しにくい支出であることにも留意すべきである。
問題は、現状のまま生活保護費を切り下げた場合。これらの世帯に何が起こるかということである。結局節約のたやすい食費を切り詰め、さらには冷暖房費なども削って暑さや寒さを耐え忍ぶ生活になるのではないか。
その結果、栄養摂取量の不足、健康水準の低下、疾病多発傾向となり、結局は医療扶助額の増大につながっていくことになるのではないか。
生活保護バッシングは社会保障の充実には何の役にも立たず、ただ溜飲を下げることになっているような気がしてならない。雇用の不足や低賃金、低年金のため低所得に陥っている低所得者のために、もっと重要な施策があるはずであり、政府にはそれを強く求めたいのである。