【2013.新年号】自民党は本当に圧勝といえるのか -民意を反映しない選挙制度を憂う-
野田首相の「破れかぶれ解散」による総選挙は、自民党の圧勝、民主党と日本未来の党の惨敗という結果で終わった。
獲得議席数だけを見れば自民大勝であることは確かであるが、本当の民意はどこにあるのか、冷静に分析しておく必要がある。
まず第一に、戦後最低となった低投票率の持つ意味である。1,000万人を超える棄権者があったことは決して軽視されるべきではない。3年前、政権交代を望んだ人々が投票所に足を運んだ結果高投票率となったことを想起するならば、今回の総選挙は民主党の公約違反で政治不信が高まった結果とみることもできる。またマスコミの事前の選挙情勢分析で自民圧勝の予想が出された結果、投票所へ行く気がそがれた人もいたかもしれない。
第二に、自民党の得票率は43%であったにもかかわらず、議席占有率は79%にもなった。さらに言えば、自民党の得票数は前回総選挙より比例で219万票、圧勝した小選挙区でさえも166万票も減っており、全有権者の24%、比例代表にいたっては15%に過ぎないというマスコミの指摘もある。得票率で43%でありながら議席で8割を占めたという小選挙区マジックが、民意を反映すると胸張っていえるであろうか。
このように、どこから見ても国民の過半数は自民党を支持していないにもかかわらず、改憲を公約にした自民党と日本維新の会で計347人の議席を占めた。衆議院では改憲できる3分の2、320議席をはるかに超える勢力となったのである。
今のところ参議院では少数であるものの、憲法9条を廃棄し、自衛隊に代わる国防軍の創設、集団的自衛権の行使を容認する憲法改定への動きは加速するはずである。このことはアジア各国の政府や国民に大きな衝撃を与えた結果となった。
中国はともかくとして、わが国においても、尖閣問題を理由にますます軍事的対応に走る可能性が出てきたのは誠に残念である。1954年に周恩来総理とネールインド首相が提唱したかつての平和5原則((1) 領土・主権の尊重 (2) 対外不侵略(相互不可侵)(3) 内政不干渉 (4) 平等互恵 (5) 平和共存)は、戦後のアジアや世界の平和構築へ多大な影響を与えたものであるが、その高邁な平和主義は今やどこに行ってしまったのであろうか。
実際には国民のなかで少数の支持しかない自民党が、今度の選挙結果を利用して一気に改憲や増税、TPPに走るとすれば、この国にとって不幸な結果を招き、ますますアジア諸国から切り離され、アメリカの属国になってしまう心配がある。
こうした政治的ゆがみを正すためにも、民意を反映した選挙制度への見直しがなされることを切に願うものである。