【2012.6月号】保険医療の「ゼロ税率」実現を医療界の大きな声に
野田内閣が打ち出した消費税増税法案をめぐって大詰めを迎えている。どの世論調査でも生活費のなかで大きな負担を強いられる多数の国民が増税に反対するのは当然であろう。
その中で、社会保険診療の中で消費税の実態については、われわれ医療人の間でも十分に周知されていないのではなかろうか。
昨年8月、日医と4病院団体協議会が開催した市民公開セミナーで講演した税理士の船本智睦氏によると、消費税が導入された1989年以降の9年間だけで、消費税負担によって消失した医療機関の収益は累計約6兆円に上るという。そしてこの先消費税率が上がれば、医療安全にコストをかける余裕はなくなることを指摘した。この6兆円が医療界に還元されていれば、日本の医療はもっと質を向上させることができたはずだったと発言した医療ジャーナリストがいたが、まさに消費税は地域医療の崩壊を導く黒幕の一つなのである。
厚労省や財務省は、今の診療報酬には2回にわたって薬価と診療報酬の本体部分に計1.53%の上乗せがされているという。しかし、薬価を除く本体部分の上乗せはわずか36項目0.43%のみである。この全く不十分な上乗せでさえも2年に1回の診療報酬改定で事実上消失していることは明らかである。
われわれは保険診療のために医療機器や付属設備、駐車場や建物の整備など多くの支出をしており、これらの購入に伴う消費税は最終消費者ではないはずのわれわれが全て負担している。しかし自費診療を除く社会保険診療は「非課税」のため、この消費税を患者に転嫁はできない。
これまで保団連はこの医療機関の法外な負担を回避する方策として、社会保険医療は現行の「非課税」ではなく、真の非課税=「ゼロ税率」とすることを主張してきた。そして日医、日歯も基本的には「ゼロ税率」を要求している。
先日の保団連が行なった財務省交渉の中で主計局の課長補佐は「ゼロ税率」も選択肢の一つであることは否定しないと述べた。では何か不都合があるのかとの問いに、「ゼロ税率」だと減収になるのでどこからか別の財源を見つけて補填しなければならないと応じたのである。
要するに、財務省は税を取ることだけに終始し、わが国の医療をどう改善し、医療機関の窮地をどう救うかという観点には全く無縁なのである。
われわれ医療人はこのゼロ税率実現という一点でも大きく結集することができる。その声を国民に大きく届かせるために、保険医協会としても奮闘したい。