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【2012.5月号】原発再稼働の動きは民意に反している

 今、国内の原発50基のうち、稼働しているのは北海道電力・泊原発の3号機1基のみであり、この原発も5月4日には定期点検のため運転休止となる。
 このような中で野田政権は、福島原発事故を受けて自治体から見直しを迫られている原発再稼働の「安全性に関する判断基準」を関係3閣僚の初会合からわずか3日で作成し、関西電力大飯原発の地元に再稼働同意の要請を行なった。
 浜岡原発をはじめ全国各地の原発が今なぜ運転を中止しているかと言えば、これまでの原子力安全保安院や原子力安全委員会の地震災害に対する安全審査が全く杜撰であったことに尽きる。これは福島原発の苛酷事故に対する政府や東京電力の場当たり的対応や情報隠しの根深い体質が国民の目にも明らかになったからでもある。またこれまでの地震津波災害の想定があまりにも甘すぎることも明らかとなったからでもある。
 最近発表された政府の有識者検討会による東南海連動地震の想定では、浜岡原発付近では震度7の地震によって地盤が2.1メートル隆起すると予想され、その隆起を考慮しても津波の高さは最大で21メートルに達すると想定されている。ちなみに下田では最大25.3メートルと太平洋沿岸域で最大の想定である。現在建設中の18メートルの防潮堤が安全性を確保していないことは明らかであり、それ以前にマグニチュード9クラスの地震動で2.1メートルの隆起に数千本もある原子炉配管系が無傷であるはずがないのである。
 脱原発を決めたドイツで原発推進派であったメルケル首相に、すべての原発の閉鎖を勧告した諮問機関「倫理委員会」委員で知日派のミランダ・シュラーズ教授は、『ドイツ人が日本について先ず疑問に思うのは、広島と長崎に原爆を落とされたにもかかわらず、しかも日本は地震の多い国であるにもかかわらず、どうしてこれほどたくさんの原発を持っているのか、ということである。これはドイツ人にはとうてい理解できない』『日本には理想がないとは思わないが、企業が利益を追求する力が非常に強く、理想の力を弱めているのではないだろうか。まるで政治を動かしているのは企業であるかのようだ』と指摘しているが、まさに真実をついた発言である。
 政府は再稼働を急ぐ理由に夏の電力不足を挙げているが、昨年の他社受電実績630万キロワットを計算していない関西電力に何の注文も出していない。こうした政権の姿勢は企業の利益を優先し民意には背を向けた態度であるとしか言いようがない。
 わが静岡では浜岡原発30キロメートル圏内の10自治体首長のうち6人までが原発再稼働を容認しないという立場を表明し、すでに県内12自治体議会が永久停止・廃炉を求める決議や意見書を採択しているが力強い限りである。
 世論調査でも7割の県民が原発はいらないと答えている。行政と住民が一体となって、一日も早い廃炉と原子力に依存しないエネルギー政策への転換を実現していきたい。