主張

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【2025.3月号】何故歯科医師国家試験は合格率が低いのか?

 今年も2月1日、2日の両日に歯科医師国家試験が実施された。昨年・2024年実施の第117回歯科医師国家試験は合格者2060名で合格率は66.1%であった。つまり受験者の三人に一人は合格出来なかったことになる。筆者が受験した1989年には合格者は3576名で合格率は92.9%であった。合格率の推移を見てみると2003年の91.4%を最後に概ね80%以上で推移していた合格率は70%代以下、合格者数は2500人弱となった。特にここ10年ほどは合格率は60%台で合格者数は2000人台で推移している。
 国家試験は合格定数が決まっているわけではないので一定の基準を上回れば全員合格することもありえる。つまり問題を安易にすれば合格率は上がり難解にすると下がるであろうから、問題のレベル設定で合格率を操作できるであろう。

他医療職の合格率は
 2024年の医師国家試験の合格率は92.4%、理学療法士89.2%、看護師87.8%、介護福祉士82.8%、放射線技士79.5%、薬剤師68.4%、歯科関係では歯科技工士95.7%、歯科衛生士92.4%である。薬剤師以外は高い水準であるのでとりわけ歯科医師の66.1%の低さが目立つ。

歯科医師過剰対策のためか
 歯科医師過剰問題が言われてから久しい、1960年代の高度成長期から食生活の変化等によりう蝕が多発し歯科医師不足が叫ばれた。1969年人口10万人の歯科医師数をそれまでの30人台から50人とする目標が閣議決定され、歯科大学の新設認可が相次ぎ歯科大学・歯学部の7校体制が1978年には29校体制となった。人口10万人の歯科医師数は1984年に52.5人となり目標は達成されたが、その後も歯科医師数は増え続け2022年には84.2人となった。
 入学定員の削減も行われてきたが私立大が中心の歯科医師養成では大学経営の問題もあり限界にきている。
 国家試験を難解にして「出口」で新規の歯科医師数を絞るような過剰対策に国家試験が使われているのでは、と勘ぐってしまう。
 確かに最近の国家試験問題を見ると難解な問題が多い、合格率から毎年1400人近くが歯科医師になれない現実がある。
 歯科医師過剰と言われるが、果たしてそうであろうか?在宅や障害者歯科を行う歯科医師は不足しているし、行政の歯科医師も不足しているそして無歯科医師地区も全国には多い、適性配置を考えればまだまだ歯科医師の需要はあるのではないか。
 むろん国家試験であるから一定の能力・適性を持っていない人を篩にかける機能は当然であるが、過剰対策に使われているとしたら如何なものか。