【2022.3月号】マイナポータル利用規約から見るマイナンバーカード保険証利用の危うさ
マイナンバーカードの保険証利用については協会は問題点を指摘してきた。保団連も昨年新たに「医療情報とマイナンバーのひもづけがなし崩し的に拡大される事態につながるマイナンバーカードの保険証利用、医療・社会保障の抑制・削減、国民監視・行動統制等に利活用される危険性が強いマイナンバー制度の利用推進・拡大に強く反対する」声明を発出した。メリットもあるであろうが、情報漏洩や医療現場での混乱などデメリットによる弊害も多く予想される。
今まで様々な問題点が指摘されてきたが、実際の保険証利用の申し込みについての問題点はあまり指摘されなかったと思われる。厚労省ホームページによると、健康保険証利用の申し込みはマイナポータルかセブン銀行ATMのみからとなっている。
問題なのは厚労省作成のパンフレット「マイナンバーカードを保険証としてはじめてご利用になる方へ」に「利用規約の確認・同意が必要です」とあり、裏面に記載された利用規約は老眼でなくても見にくい細かな字で網羅されているが、いったいどれだけの方が実際に読むだろうか甚だ疑問である。日常生活で様々な契約に規約を確認して同意を求められることは多いが「同意した」にチェックを入れても全て読んで理解したケースはどれだけあろうか。
さて「マイナポータル利用規約」を見ていくと、利用規約第2条にはシステム利用者の定義に関する規約が書かれている。「各種サービスの利用を行う者」はこの規約に同意することが求められている。患者だけでなくカードリーダーを導入した段階で医療機関もこの規約に同意したことになる。第3条には「利用者は、自己の責任と判断に基づき本システムを利用し、(中略)デジタル庁に対しいかなる責任も負担させないものとします」とある。さらにシステム利用者は、「本システムに関する法令」のみならず「マイナポータルウェブサイトに掲載する事項」にまで従わなくてはならないことが記載されている。第5条では「内閣総理大臣」に対して「機構」が情報開示する際に、「本人確認情報の開示を電磁的記録により行うこと」について同意したものとみなします、第22条「損害が生じた場合、デジタル庁は(中略)システム利用者又は第三者が被った被害について一切の責任を追わないものとします」とある。第21条「システム利用者は、本システムを利用するために必要なすべての機器を自己の負担において準備する」、第22条「デジタル庁は、本システムの利用に際しマルウェア感染等で生じた被害に被害について、責任を負わないものとする」、第23条「デジタル庁は、必要があると認められるときは、システム利用者に対して事前に通知を行うことなく、いつでも本利用規約を改正することができるものとします」とされている。
このように総理大臣やデジタル庁を免責にするような一方的で極めて不平等な規約であることは明らかである。また、情報漏洩での救済などは全く言及がない。マイナンバーカードを保険証利用することやカードリーダーを設置することは、この規約に同意したことになる。
マイナンバーカードによる資格確認の実施は各医療機関に当然委ねられるが、実施にあたっては利用規約を熟読した上で判断されることを願いたい。
【2022年11月2日追記】
3月号で主張した時点では、マイナポータル利用規約について、「医療機関がカードリーダーを設置することはマイナポータル利用規約に同意したことになる」と解釈することも出来た。2022年9月22日、本件に関して全国保険医団体連合会が厚生労働省の担当者に確認したところ、「医療機関が顔認証付きカードリーダーを導入・運用していても、マイナポータル利用規約に同意したことにはならない」との見解が示された。