【2021.11月号】今こそ新型コロナ感染症の第6波に備えた対策の構築を
新型コロナ感染症の第5波がようやく収まってきたようで、ほっとしている医療関係者も多いと思う。しかし第5波の課題は解決されたわけではなく、積み残されたいくつもの対策をこの機に整備することが求められている。
まず、第5波がもたらした深刻な問題は、感染の急速な拡大が病床不足をもたらし、自宅療養者が管理体制の不十分なまま急増したことである。
COVID19検査陽性患者数の増加に伴い軽症患者も増加したことは確かである。しかし、当初は軽症者であってもいつでも急性増悪するリスクがあり、隔離が不十分であると他者への感染源となるリスクも無視できないことが明らかになっている。
全国的にも急変するリスクを過小評価していたことが報告されており、この結果自宅療養中の死亡も相次いだのである。こうした不幸な事態を防ぐためには、保健所のスタッフによる電話照会体制では十分ではないことが明らかであり、医師や看護師の直接の管理下に置くことが欠かせないという教訓が残ったのである。
自宅療養を導入した起点が急性期の病床不足にあったことは否定できない現実であり、常に最大限の急性者用ベッドを確保しておくことも病院スタッフの充足度から見てまた現実的ではない。急性期病院の外に、発症した患者を常に管理下におけるフレキシブルな施設が必要とされるのは当然であろう。
少なくとも来るべき第6波では、発症初期に安定している患者でも自宅療養は原則として避け、医師や看護師の目が届くような体制を確保したうえでの臨時の医療施設を確保することが求められている。またここでは初期に有効な抗体カクテル療法の実施が可能な態勢であってほしい。
次に、実効再生産数を押し上げる無症状感染者の存在が第6波を招いたことの背景にあったといわれている。また、2回のワクチン接種の後でも感染する、いわゆるブレークスルー感染の存在も明らかになっている。これを防ぐには、PCR検査体制の拡充が必要である。先進諸国の経験からも多くの人に気軽に利用できる市中の検査所を設けることが必要である。特に中高生はじめ若い人は病院・診療所での検査に足が向かないのは明らかであり、看護師、薬剤師や検査技師などの専門技術者の積極的な活用で、市中での無料検査所の設置をぜひ進めるべきである。
この際、日ごろから公費を投入している国立を含む公的医療機関の役割は、厳しい経営条件の民間病院以上に求められるはずである。急性期ベッドの確保のみならず、市中の検査所への人的派遣なども期待したい。
急性期症状を呈した患者の入院収容体制の確立には、第5波の経験が生きるはずである。地域の急性期病床の確保では保健所を通さずに行うベッドの調整も各地で行われていると聞く。人員体制の厳しい保健所に過負担にならないよう、行政の中での指揮系統を確立して地域の医療体制の確保に万全を尽くすことを強く求めたい。