主張

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【2021.2月号】新型コロナ対策で今求められること

 新型コロナCOVID-19の感染拡大が止まらない。本号が送付される時点では2回目の緊急事態宣言で新規感染者は減少しているかもしれないが、一方で重症者の発生は減少せず、対応する病床確保がひっ迫する可能性も高い。
 何よりもウイルス変異株の発生によって、今まで感染を免れていた人々に拡大する可能性も心配される。
 なぜ感染が止まらないのかといえば、端的には感染者と非感染者の接触が続いていくからである。ここで肝心なのは感染者と非感染者の社会的隔離期間を確保するということに他ならない。このためには、感染者を早く探し出し、適切な方法で隔離する以外にない。最近の知見では隔離期間は10日でよいという報告も出ている。
 無症候の感染者の発見はPCR検査の重点的な実施以外にはない。しかも単発的な実施ではなく一定期間、繰り返し実施することが必要である。
 こうした事実を考えると、かのGOTOトラベルがいかにリスクを広げるか理解できる。訴えるべきは、GOTOトラベルの前のGOTO―PCR検査所であった。
 日本の産業がいかに観光産業に依存しているとしても、きちんとした減収補償の上で移動をストップさせる決断が必要であった。
 さて、私たちの問題は医療体制の確保である。これには病床だけでなく人的体制の確保も必要になる。国の緊急時にどういう体制を作るか、医療団体を含め医療関係者間の意思疎通があまりにもお粗末ではないか。
 各地域ごとに、自然災害対応の例に倣って、感染症(伝染病)対策本部を作り、医療関係者の結集を訴えることが必要であった。特定の感染症病棟だけでなく、PCR検査センター、公衆衛生的な発生者のフォロー体制など、方法があったはずである。先進諸国では医学生をも動員してこれに対応させた例もあると聞く。おそらくは100年に1回のパンデミックなのである。医学生を含め、医療関係者にとっては生きた経験を積む絶好の機会であった。
 今回のパンデミック対応を見ても、首都圏の大学の対応のニュースは、一部の例外を除いてほとんど出てこない。公的病院や民間病院の奮闘ぶりは伝えられているが、例えば東京大学は何をしているのか、少しも伝わってこない。米国ではマサチューセッツジェネラルホスピタル群の活躍が報じられていた。
 せめて医系大学挙げての、各保健所への支援ができなかったか。
 まもなくするとワクチン接種が控えている。せめてこれには多くの大学関係者も参加してほしいと願う。
 医療者が総力戦で戦う相手、まさに新型コロナウイルスはそれにふさわしい相手ではないだろうか。