【2017.11月号】患者が安心して受診できる医療制度の実現を
突如始まった衆院選が、自公政権の安定多数と立憲民主党の躍進で決着した。おそらくは次期総選挙はオリンピック以後になるので、3年間は安倍一強政権が続くことになった。
今回の衆院選で何が争点であったのかよくわからない。安倍首相が選挙で具体的に強調したことは北朝鮮情勢に対応する「この国を守り抜く」安定した政権が必要だということ、それと「保育・教育の無償化」だった。それに対して野党側はどうだったのか。その責任は民進党の解体的分裂と希望の党の出現でわかり易い政策を訴えるようなことにならず、「劇場型」選挙になってしまったことにある。
少子高齢化、人口減社会への備えは党派を超えた問題である。たとえば今の地域包括ケアシステムは、2025年を迎え家庭介護力の低下で果たして機能するのだろうか。こうした問題を正面から取り上げた候補者は残念ながら目にしなかった。
私たち医療者が心配するのは、国や自治体が在宅ケアを強調されても、それを支える社会の受け皿や仕組みが整っていないのではないか、ということである。
今や高齢者の在宅医療・介護や施設介護は人不足でこれ以上拡大できない状況にある。過重な労働がこれ以上続けば医療・介護従事者の確保に支障を生じることも現実に心配される。
地域包括ケア以前の問題として、家庭介護力の回復、地域の支えあいの新たな構築に力を入れるべきであるが、それを推進する政治的風土をつくらなければならない。
安倍首相は「AIやロボットなどの活用で劇的な生産性の向上を目指します」というが、それでは足元の高齢社会の問題は解決しない。「国土強靭化で国民の生命と財産を守る」というが、それで国民は安心な生活になるわけではない。
社会保障は子どもと老人のためにあるというのは誤解であり、現役世代が安心して子どもや老人とともに暮らす、ともに生活を楽しむためにあるのである。
新議員の皆さんに訴えたい。少子高齢化にたいして国はどういう政治をするのか、あなたのビジョンを、あなたの所属する政党のビジョンを説明してください。そうでない限り、消費税の引き上げや、武力行使を是とする改憲・加憲など、国民の支持は得られない。
病気をしても安心して病院や医院にかかれる社会、家族を追い込まず、安心して生を全うできる医療制度を、国民も、また私たち医師・歯科医師も望んでいるのである。