【2016.9月号】あらゆる世代に影響する患者負担増計画に、異議あり!の声を集めよう
参議院選挙で勝ったとはいえ国民の評価が決して高いといえない安倍首相のアベノミクス戦略、そのブレーンが集まる経済財政諮問会議で検討されている「改革工程表」をご存じだろうか。
これはアベノミクスの光からは見えない影というべき壮大な国民負担増計画で、その一部はすでに2014年4月から始まったが、2020年までに順次実行に移すという計画だ。
この工程表でみると、医療保険関係に限っても以下のような11項目が挙がっている。
①受診時定額負担:これは外来受診のたびに1回100~500円を上乗せして徴収する。批判をかわすために「かかりつけ医」以外の受診に限定する案も検討されている。
②薬剤の給付額を後発医薬品の価格にして、先発医薬品を選択した患者には差額を負担させる。日本版参照価格制といわれる。
③紹介状なしで大病院を受診した場合は初診時5000円(歯科は3000円)、再診時はその半額以上を負担させる。これは本年度からすでに実施された。
④70歳から74歳までの中期高齢者の窓口負担2割化。これは2014年4月以降で実施済みであるが、予想通り75歳以上にも波及することになる。
⑤75歳以上の後期高齢者の窓口負担を原則2割にする。これは2割負担で75歳に達した以降もそのまま続行させるというものであり、すでに75歳以上の人も数年をかけて2割負担にするという。
⑥75歳以上の後期高齢者の保険料軽減制度を2017年度から段階的に廃止する。これで低所得者や被扶養者の後期高齢者保険料が大幅に上がることになる。
⑦介護保険と同様、金融資産を勘案して医療保険でも一般病床、療養病床ともに入院時居住費(光熱費に相当)を徴収し、同時に70歳以上の「現役並み所得者」の3割負担者を拡大する。高齢者からいかに負担させるかを考えた官僚の執念だ。
⑧一般病床での入院時食事代負担の引き上げ、これは本年からすでに実施され、2年後にも引き上げとなる。これは子どもの入院療養費にも適用されることになる。
⑨市販品として定着した湿布、目薬、ビタミン剤、漢方薬、胃腸薬、鎮痛薬など、OTC類似薬については保険給付から外す。湿布薬の枚数制限はその露払いといわれる。
⑩市販品に転用されたスイッチOTC薬(風邪薬、胃腸薬、鼻炎用内服薬など)の保険給付は自己負担額を引き上げる。これは来年度に国会へ法案提出を予定するという。
⑪さらに高額療養費支給制度の見直しもこうした負担増計画の重要な一部である。
安倍政権はこうした負担増計画を選挙の前には何も言わず、選挙が終わると早速に社会保険審議会を利用して打ち出していくという、実に巧妙なやり方である。
介護保険の利用料や保険料の引き上げの際も国民には何の説明もなく、ケアマネージャーが苦労して説明をしているのが実態だ。これは医療でも同様で、いずれはわれわれが矢面に立って患者に説明をしなければならないことになるが、このような保険制度の後退をストップさせるためにできることがある。その手段の一つとして有用なのが保団連の請願署名への訴えである。ぜひ通常国会までに多くの国民の怒りの声を集めたい。