【2015.11月号】「かかりつけ」医師、歯科医師、薬剤師制度の拙速な導入に反対する
次期診療報酬改定を前にして、中医協での審議が加速度的に進行している。
この審議の中で気になるのは、「かかりつけ医」、「かかりつけ歯科医」に加えて「かかりつけ薬剤師」まで登場し始めていることである。
最近の中医協論議の中でも、後発品で銘柄指定の薬剤処方が増加している問題を巡って、支払側委員から「異常ではないか」とのクレームがついた。曰く「医師の処方銘柄を変更できる調剤権があるのがかかりつけ薬剤師」という議論である。
中医協の行った調査結果でも、医師、薬剤師、患者とも後発品の品質に不安の声が出されているのであり、医師が後発品ならどのメーカーでも良いとせず、自らの使用経験に基づいて銘柄指定を行うことも医師の裁量権の一つであろう。
だが後発品を促進したい厚労省や支払側にとっては、「後発品を使うのであればこのメーカーのものに限る」という医師の処方は後発品使用促進を妨げる要因になるらしい。
そこで、「かかりつけ薬剤師」であれば指定されたメーカーを替えてもいいではないか、という論議になったわけだが、果たして患者のためにそれで良いのであろうか。別の支払側委員からは「生物学的同等性が認められるとして認可された薬品で相違があるというなら医師側としてその根拠をデータで示してほしい」という、臨床医の仕事を理解しようとしない、無謀な発言も出されている。一方の当事者であるはずの厚労省は、マイナンバー汚職が発覚して浮き足立っているようで適切な対応は期待できないようだ。
社会習慣的に見れば、患者に「かかりつけ」の医療機関があることは自然の理であり、それが複数あっても何の不思議もない。そしてこれは患者の利便性や家族の受診履歴と関連したことであって診療報酬や職務とは無関係な話であるはずである。それをいつの間にか医療費抑制のためのツールに利用しようとする意図が見え隠れしている状況がある。
2017年度から「総合診療医」を目玉にした新たな専門医制度が発足するが、これにも医療費抑制のツールにしようという意図が見え隠れしている。
あくまで「かかりつけ医制度」を促進して医療費抑制を図りたい財務省や厚労省、その裏にある規制改革会議の狙いに対抗し、医療界は一致して拙速なかかりつけ医制度に反対しなければならないであろう。