主張

ここから

【2015.9月号】浜岡原発の唯一の選択肢は永久廃炉である

 8月11日、九州電力川内原発が再稼働に踏み切った。折しもその4日後の8月15日、霧島火山帯姶良(あいら)カルデラの外輪山である桜島が噴火警報レベル4となった。川内原発は桜島からわずか52kmである。5月29日には同じ火山帯の口永良部島が噴火している。こんな時に再稼働に踏み切る切迫した電力事情は全くなく、ただ政治的意図だけであろう。
 さてこの5月で浜岡原発が全面停止して5年目に入った。当時の民主党政権が浜岡原発の停止を決断しなければならなかった理由は明白である。すなわち浜岡原発が首都圏に最も近い原発であり、しかも南海トラフ地震の東方震源域の直上に位置していることである。政府の地震調査研究推進本部の報告書で半世紀中に東海地震が起こる確率は97%(30年以内には86%)という驚くべき確率であり、想定される津波の高さも19メートルという高さである。
 中部電力はあわてて防潮提の工事を急ぎ、現在までに高さ22メートルという工事を完成させている。しかし専門家からは防潮堤の立つ海岸砂丘が福島原発と違って地震の揺れで液状化し防潮堤が傾く可能性が高いと指摘されており、また冷却用海水を取る600m沖の取水塔、および取水トンネルの震災耐性の危うさも指摘されている。
 福島原発と同系の沸騰水型炉のため、いざというときに格納用器内の放射性ガスを大気中に排出するフィルター式ベントも建屋の外の海側に作られており、福島原発なみの津波では水没する可能性を指摘する専門家の声もある。
 しかし中部電力はあくまで再稼働の姿勢を崩さず、4号炉は昨年2月、3号炉も今年6月再稼働に向けた適合性審査の申請が行われている。
 今、浜岡原発の現状維持の費用だけで年間1千億円に達し、すべて消費者に電気料金として上乗せされることになる。また防潮堤やベントなどの「安全対策」のためにさらに3千億円を超える費用が必要とされ、これらの費用も将来電気料金に上乗せされる予定である。加えて使用済み核燃料の廃棄に要する費用など、未来に膨大な負債を残すことになることは言うまでもない。
 住民の避難計画はどうなっているのか。浜岡原発半径31キロ圏内(UPZ)の住民94万人の避難計画の見通しは立っていない。最近当協会が行なった圏内の医療介護施設68か所のアンケート調査で避難計画があると回答した施設は入所者数100人の施設1件だけであった。学校関係での避難計画でさえ立てられていないのである。
 浜岡原発につながる主要道路は狭く、福島事故時以上の渋滞が予測され、子ども達の避難を優先させる輸送手段も困難を極める。事故の規模によっては早期に東名高速道路でさえ通行できなくなる恐れがある。
 県民や周辺住民の世論も多数が原発の再稼働に反対である。31キロメートル圏内の11自治体首長も再稼働賛成はゼロである。欠陥と不安の多い浜岡原発、再稼働は論外であり、一刻も早い永久廃炉しか選択肢はない。