【2014.11月号】国保の健全運営のために必要なことは国税の投入である
医療介護総合法によって、国民健康保険の広域化が日程に上ってきた。これは国保料(税)の賦課や徴収事務はこれまで通り市町が行うが、財政運営そのものは県が行うというもので、つまりはかかった医療費に応じて市町の国保料を定め、徴収率を上げさせ、国保医療費全体を抑制しようという目論見である。
ご承知のように現在国保料はサラリーマンの健保保険料より相当に高い。健保加入者の所得より相当に低いにもかかわらず、非常に高い保険料を払わなければならない。その理由は明らかである。
第一に国保加入者には高齢者(60歳から75歳未満で加入者全体の45%を超える)が多く、医療費もその分かかることになるということである。そのことが保険料率に反映するが、医療費は診療報酬で原則一律であり、所得が少ない国保加入者の医療費の所得・保険料収入に対する割合は一層高くなる。
第二に国保加入者には雇用者負担がなく、国庫負担額を除いた医療費を加入者で全額負担しなければならない。サラリーマンの場合は保険料は労使折半であるが、この雇用主負担は社会保障の理念、つまり所得再分配という仕組みの一部と考えられている。労働により得られた収益は、賃金と社会保険料負担として払われ、残りが企業所得や投資家への分配に使われるわけである。公務員も国や公共団体が雇用者となり、税金の一部から保険料の半分が支払われていることに留意すべきである。
第三に国保への国庫負担金がこの30年間で半分に減額されてきたという実情がある。創設時は社会保障としての国保制度という位置づけから、農林水産業者や自営業者、退職者、高齢者の保険料の半分近く負担していた国が補助を減らしてきた以上、加入者負担(保険料)が高くなるのは当たり前である。これらの人々は収入に応じて所得税や住民税を納めているが、その一部を所得再分配機能で国保への補助金として受け取ってきたのだが、それを半分に減らされてきたのである。サラリーマンでいえば賃金カット処分となったに等しいことになる。
今日、国保加入者の年金生活者の占める割合が増加してきている。国保問題の根本的解決は、創設当初の理念に立ち返り、国税補助金の復活以外にはありえない。
このまま国保加入者の保険料負担が続けば、収めたくても高い保険料で払えない人々が増えることは明らかである。近年わが県でも国保料滞納を理由にした差し押さえが始まっている。悪徳業者以外の善良な低所得者への差し押さえ処分は、行政自身が憲法に違反する行為ではないか。
農林水産業に従事している人々、自営業にいそしむ職人層など国保の加入者の大半は国民生活を支え続けてきた準公務労働者であると位置づけることも可能である。開業医師層も同様である。公務員だけが税金を使って保険料を折半にしてもらっていることでよいはずがない。
国保問題の根本解決は国税の投入で払える保険料に引き下げることしかない。