主張

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【2013.8月号】参院選後の医療改善運動を展望する

 参議院通常選挙は大方の予想通り与党の圧勝で終わった。自民党はひそかに狙っていた単独過半数を制することはできなかったが、公明党との連立で、いわゆる「ねじれ国会」を解消することに成功した。
 この結果についていろいろな角度で検討しておくことは、今後の医療改善運動を展望するうえで有益であろう。 
まず、本当に自民党の圧勝なのかということである。政党別の支持票を示す比例代表選挙での自民党の得票率は34.68%であり、52.6%という低投票率であったために対有権者比では18.2%と20%に届かない支持率である。公明党の支持率7.4%を足しても、25.6%に過ぎないのである。
 これで国会過半数を制したとしても、それだけで国民の過半数の支持を得たということにはならないであろう。これは小選挙区制のマジックで、比例代表の得票率27.6%の自民党が61.2%の議席数を占めた昨年12月の衆議院総選挙でも同じことが言えるのである。
 次に、どの党が伸びてどの党が後退したかということも重要である。
 この点では同じ比例得票で7か月前の総選挙と比較をしてみると興味ある事実に突き当たる。自民党がこの間増やした得票数は183万票であり支持基盤の強さを物語るが、同じように支持票を増やした政党には146万票増やした日本共産党があり、公明党も40万票増やしているので、得票を増やした政党はこの3党である。一方、大敗した民主党はもちろん、第三極を目指した日本維新の会、みんなの党も軒並み支持票を減らしている。
 こうしてみると、自民党、公明党の連立政権が勝利したのは事実であるとしても、支持率の状況からはとても圧勝とはいえないであろう。
 東京、大阪などの大都市での選挙結果を見るまでもなく、国民は無条件に自公政権に期待しているのではなく、自公への批判勢力にも大いに期待しているとみることもできよう。このように与党がけっして国民から白紙委任されたのではないことに確信を持ってよいのではないか。
 こうした新たな国会情勢の中で、秋の保団連の国会行動が始まろうとしている。どうやら消費税の引き上げも予定通りらしく、TPPへの参加も国会審議抜きに進行しそうな雲行きである。
 国民が安心して医療を受けられ、われわれ保険医も安心して診療を続けるためには何が必要か、この点で国会議員には正確な理解を求めなければならない。社会保障や医療の在り方がどうなるかは、国民生活の根幹にかかわる問題であり、犠牲者を生み出すような失政は許されない。
 国会が形骸化したり、やりたい放題の政治状況にならないように、監視の目を強め、世論を喚起しながら安倍政権の暴走を止めようではないか。