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【2013.6月号】TPP参加の是非は参院選の最大の争点

 7月のマレーシア会合から、日本はTPP交渉に参加すると報道されている。にもかかわらず、TPP参加に賛成なのか反対なのか、あいまいな態度をとる議員(候補者)がなんと多いことか。とにかく参加して日本の国益を守る交渉をしないことには結論をだせないといった無責任な意見がまだ永田町にはあるようである。
 なぜそのような意見が無責任なのかと言えば、1個人、あるいは1企業である投資家が加盟国の政府に対して損害賠償を求める権利を規定したISDS条項は、TPP推進国の最大のポイントであり、もはや交渉の対象ではないことはわかりきっているからである。
 米国にとってはTPPの予行演習となった韓米FTAの場合、ISDS条項対策のためにすでに韓国の国内法の改定が始まっている。もしも日本の自治体がBSEの全頭検査を維持したり、遺伝子組み換え食品の学校給食採用を見送ったならば、米国の投資家たちが損害賠償請求をすることも可能になる。
 医薬品について言えば、外資系製薬企業の保険薬価を低く抑えるような決定を厚労省(中医協)が決定すれば、その投資家たちに損害賠償を求める権利が保障されるというわけである。さらには国民皆保険制度を形式的に守りながら、高い薬価を維持させ、混合診療を導入して民間医療保険の市場を広げることも十分可能なのである。
 すべてはISDS条項さえ維持できれば、巨大資本とその投資家たちによる市場支配が可能となるとんでもない経済協定、それがTPPなのである。
 そもそもTPPは2006年に小さな4か国で始まったFTA(自由貿易協定)に過ぎない。それが2008年9月のリーマン・ショックで打撃を受けた巨大金融資本の要求で、わずか1年後の2009年9月には失業率の上昇で悩むアメリカの国家戦略の柱になったのである。そして2010年10月の民主党菅首相が突然の施政方針演説で参加表明がなされたが、その理由「平成の開国」論の根拠は今もって不明としかいいようがない。
 昨年12月の総選挙では安倍自民党総裁はむしろTPP慎重論を唱え、民主党との違いを際立たせて選挙で圧勝した。340人を超える自民党議員がTPP不参加を表明したとされる一方で参加へのレールが既成事実化されようとしているが、半年前の公約はどこに行ってしまったのか。来たるべき参議院選挙では、候補者一人一人の態度をしっかり点検して投票に臨みたい。