【2012.9月号】低所得層が置き去りにされる社会は健全とはいえない
最近の国民各層の生活実態を示す調査結果が相次いで公表された。
まず、国立社会保障・人口問題研究所からは、20歳から65歳の単身で暮らす女性の32%、65歳以上では52%が、国民一人ひとりの所得の真ん中の所得の半分以下にあたる「相対的貧困」層であるという調査が公表された。さらに19歳以下の子どもがいる母子世帯での貧困率は57%であり、女性が家計を支える世帯に貧困が集中している。
国連児童基金(ユニセフ)からは、日本の子ども(18歳未満)の「相対貧困率」は14.9%で、先進35カ国のうち下から9番目の27位という報告がなされた。この日本のデータは2009年の所得を基にしているが、これまでの報告によると、2000年は12.2%、2005年と1997年がともに14.3%なので、年を追うごとに相対貧困率の上昇がみられている。
加えて日本は、子どものための施策に対する公的支出が対国内総生産(GDP)比1.3%で、先進35カ国中、下から7番目に低いという実態である。
続いて、厚労省による「国民生活基礎調査」から、2010年の1世帯当たりの平均所得が538万円となり、22年前の1988年とほぼ同じ水準であることが明らかになった。これはこれまで最高だった1994年と比べると126万円も減少しており、16年間も所得が減り続けていることになる。
とくに子どものいる世帯では前年比で38万円も所得が減少しているが、わが国ではいかに子育ての環境が厳しくなっているか、ということを示している。最近大きな注目を集めているいじめ問題でも、背景にはこうした経済的環境の格差が子どもの世界に反映しているという指摘もある。
極めつけは、大阪府立成人病センターのがん予防情報センターが「国民生活基礎調査」を元に分析した報告で、がん検診の受診率が職業や所得によって3倍以上の差があった、というものである。まさに所得の格差ががん予防や健康づくりに如実に影響していることを示すものである。
この中で注目すべきは、平均所得が最も高い「共済組合」では受診率48%であったが、「市町村国保」では19%、生活保護受給者や無保険者では13%という実態である。中小の自営業者や低所得者層では、平日に検診に来る時間もなく、まして健康づくりへの余裕も十分に持てない現実がある。
こうした国民生活の貧困や疲弊の進行に、現政権や自公民3党が充分な改善策を持ち合わせていないばかりか、消費税の増税や社会保障への負担増へ走り出していることは、健全な社会への道筋を見失っていると言わざるを得ない。
来るべき選挙では、貧困や格差の問題が争点になってほしいものである。