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【2011.12月号】わが国の国益を損ねるTPPには参加すべきではない

 野田首相はTPP(環太平洋経済連携協定)加盟に向けての関係各国との協議に参加することを表明した。
 この場合の関係各国との協議とは、とりもなおさず米国との協議を意味することは国際常識であり、一方で米国に対してわが国が何を主張するのか、全く抽象的で説明になっていないことも国会答弁で明らかになっている。
 TPPにおける米国の本当の狙いは米国内向けの選挙対策という意味程度の農業分野にあるではなく、サービス貿易分野と括られている金融・保険取引や電気通信取引などの自由化であるというのが経済専門家や研究者の見方である。
 もっとも政府や経団連の片棒を担ぐ現体制側の専門家に言わせれば、国際競争力を付けるために必要な協定だというのだが、今までのWTO協定に基づく関税協定や二国間の自由貿易システム(FTA)方式での関税協定で国際競争力が付かなかった理由は何なのかは説明していない。
 国際競争力は安い人件費で高品質の売れる商品を作ることといわれる。しかし今日米国がTPPに真に望んでいることは、日本や参加各国の国際競争力ではない。米国発の巨大な金融資本が世界のもの作りを金融投資面で席巻することになれば、市場原理主義によるグローバル経済化が極限まで推進されることは明らかであろう。その結末は、国内経済は自立から他国依存へと変わり、主要産業の国際分業化が進んで技術的停滞が進み、一方で災害対策に弱い国になることは明らかである。
 サービス分野である医療ではどういうことが起るだろうか。米国の狙いは何も医師免許や看護師免許の自由化や米国の病院グループの自由開業にあるのではなく、米国の医療を見れば分かるように民間病院や独立法人に資本が投資できる構図を実現することにある。
 病院の設備更新や技術革新を餌にして、米国保険業界の障壁のない投資を実現し、利息返済に迫られる病院の高収益性を確保するため、混合診療解禁に向って外圧を強めるという構図が見え隠れしている。
 またこのことは国際製薬業界の莫大な利益構造にも直結することになる。同時に公的保険では間に合わない医療分野を作り出す、すなわち混合診療を拡大させ、あわせて米国製民間医療保険の市場が大きく広がるという構図である。
 米国の国益より、わが国の国益を考えて政治家は行動すべきである。一方われわれは政治家の役割をしっかり見抜き、選挙で審判を下す責任がある。