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【2011.10月号】震災後の医療再建に阪神淡路大震災の経験を活かそう

 東日本大震災から半年が経過したが、原発被災地を別としても震災被災地の復興は進んでいるのであろうか。
 JMAT(日本医師会災害医療チーム)の活動も被災地での医療機関の再開が進んでいるという理由で7月15日をもって終了した。全国的な医師支援も、例えば大学病院や基幹センター病院からの医師派遣も受け入れ先の医療機関での人件費負担が出来ないといったなさけない理由で進んでいない。

 被災した開業医も、再建資金の捻出困難、二重ローン問題の未解決、あるいは住民が戻ってこないといった様々な困難を抱えて苦闘している。この問題では被災3県の保険医協会が有効な対応策、とくに民間医療機関への再建資金補助制度の実現のために奮闘している。岩手県や宮城県ではその要求の一部が実現しそうである。

 では、被災者が、とくに家や家族を失った高齢被災者が置かれている状態はどうなっているであろうか。仮設住宅で安心の生活を送っているのであろうか。

 ある医療ボランティア(看護師)は次のように語っている。

 「気温の低下とともに、体調管理が難しくなるのははっきりしています。さらに日照時間が短くなれば、部屋に引きこもる時間も長くなる。その分、孤立したり、自殺したりする危険も高まるのではないでしょうか」

 阪神淡路大震災を経験した兵庫県保険医協会がまとめた『被災地での生活と医療と看護~避けられる死をなくすために』という冊子を見ると、被災地での今後の活動に活かせるいろいろな経験がちりばめられている。

 例えば、被災者にとって看護ボランティアの役割が重要であること、行政派遣の看護ボランティアよりも地域の開業医や医療機関を拠点にした看護ボランティアがずっと上手く地域に受け入れられたこと(当時介護保険制度はなく訪問看護ステーションもなかった時代である)が指摘されている。

 特に重要な指摘と思われるのは、こうした医療ボランティアによる活動は、身体の不調に悩む住民に医療機関への受診を促すなど、地元の医療機関の復興を援助する方向へ働きかけることが重要だという点である。

 国はこうした活動にたいして積極的な財政支援策を打ち出すべきであり、われわれ医療関係者の支援も現地の医療機関との連携を確立したうえで、少なくとも来春までは継続されなくてはならないであろう。それが『避けられる死』を無くす確実な道であると考える。