【2019.12月号】なぜ、金パラの逆ザヤは解消されないのか?診療報酬改定の前に抜本的解決を図れ
10月以降の消費税率引き上げに伴う診療報酬改定が告示されたが、ようやく歯科鋳造用金銀パラジウム合金(金パラ)価格の改定が行われた。1グラム1,675円、改定前の告示価格1,458円と比較すると約15%の引き上げになったが、果たして仕入れ価格はどうなるかである。9月までの仕入れ価格がグラム1,830~1,850円前後と言われているので、まだグラム150円強の逆ザヤがあることになる。
本来なら、2018年4月改定後の金パラ市場価格上昇に伴い、10月、さらに本年4月の2度の随時改定のチャンスがあったにもかかわらず、何故か金パラ価格は据え置かれた。
その結果、今回も歯科医院は1年6ヶ月にわたって金パラの逆ザヤという不採算を強いられ、医院経営に深刻な影響を抱えながら我慢を強いられることとなった。しかも10月改定を見てもこの逆ザヤは解消しておらず、まだ続いている。
保団連は、これまでも改定に係る金パラ材料価格資料の公開を求めてきたが、厚労省は公開に応じていない。同時に変動率が±5%以内なら改定しないという「5%増減ルール」を廃止し、6ヶ月毎の改定を行うように要求してきた。
保険適用のある材料価格の適正な改定は、医療機関にとっては死活的問題であるだけでなく、国民にとっても保険で良い歯冠修復・欠損補綴という不可欠の医療が受けられるかどうかの問題でもある。
医科では歴史的にこのような理不尽な逆ザヤ問題は経験がない。むしろ、医薬分業の推進の一つの理由であった薬ザヤ問題(保険薬価が仕入れ価格より常に高いことを指し、医科側からみれば使用期限切れなどによる廃棄薬が少なくないための必要な価格差)があったが、一時期医材料の一部に逆ザヤが見られた以外はほとんど問題になっていない。
とくに貴金属の場合は産出国が限られ、為替差、さらに国際的投機にも曝され、代用品の開発も見通しがないという特殊な状況であり、歯科医院経営を守るためにも変動幅に応じた改定が当然必要になるわけである。
使えば使うほど赤字になるという理不尽なことが一向に解決されないのは、長年にわたる政権下での医療行政の劣化であり、なかでも歯科医院経営がいかに軽視されているかという問題でもある。
保団連はこの問題の解決のため、今後も強力な運動を続けていくことを決意している。この問題は次期診療報酬改定前に解決しなければならない。医科歯科を問わず、多くの会員のみなさんのご賛同、ご協力を切に願うものである。