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【2019.4月号】おたふくワクチン、ロタウイルスワクチンの公費助成を推進させよう

  ワクチンギャップという言葉をご存じだろうか。わが国が欧米先進諸国に比べ、特に小児~学童向けのワクチンの公費接種導入がつい最近まで10年以上遅れてきたという問題である。
 肺炎球菌ワクチンやヒブワクチン、HPVワクチンが定期接種化され(2013年)、その後水痘ワクチン(2014年)、B型肝炎ワクチン(2016年)が追加されて、ようやく欧米に追い付いた感になった。
 しかし、中学生対象のHPVワクチンを除いて、まだ大きな問題が二つ残っている。一つは1993年以来接種「一時見合わせ」になったままのMMR(はしか、おたふく、風疹混合)ワクチン、もう一つは先進諸国が採用済みのロタウイルスワクチンである。
 MMRが一時見合わせになったのは、おたふくかぜ(ムンプス)ワクチンによる髄膜炎の発生のためであった。しかし今日では、おたふくかぜの自然感染例で、顕性髄膜炎の発生率1.2%(髄液細胞が増加する潜在性髄膜炎を含めると10%前後といわれる)に比較し、ワクチン後発生例は0.05%に過ぎないことが判明している。
 また、日本耳鼻咽喉科学会調査で最近の2年間でおたふく難聴の348人の報告が確認され、その多くに後遺症が残っているという事実は耳に新しい。
 不思議なことは、MMRは今日でも定期接種認定を取り消されていないにもかかわらず製造販売されないために使えず、おたふく単独ワクチンが任意接種で使われているという実態である。
 これは科学の問題でなく政治の問題であり、国の不作為を止めさせる手段として有効なのは自治体による助成である。子どもたちの耳を守り、脳を守るためにぜひ県内で市町が率先して助成してもらいたいものである。
 ロタウイルスによる胃腸炎(白色便下痢症)も多くの子どもを苦しめる疾患である。ほとんどの子どもが罹患する可能性があり、罹患した子どもの少なくとも43人に1人(2.3%)が重度脱水症で入院するという調査が厚労省から出ている。当然ながらこのために親は仕事を休まなければならず、保育園や幼稚園も相当期間休まなければならない。この感染症へのワクチンの効果は立証されており、多くの先進国が採用している。
 おたふくワクチンもロタウイルスワクチンも複数回の接種が必要であるが、その費用は合わせても4万円程度である。アベノミクスの幼保教育無償化の膨大な費用に比べればわずかな予算で可能であり、子どもの健康を守ることこそ、幼保教育に優先して取り組むのが普通の感覚ではないだろうか。
 財政力は国内でも上位に位置するにもかかわらず人口減に悩むという静岡県として、子どもにとって必要なワクチンを無償で提供するという自治体関係者の勇断を心から期待したい。